もう失敗なんて怖くない!がんばりすぎない発酵づくり 舘野真知子 著
自宅で作る発酵食品とそのアレンジレシピを紹介
発酵食品がブームと言われるようになって久しいですが、コロナ禍による健康意識の高まりから、ブームは世界的に広がりつつあります。
そのため、発酵食品に関するレシピ本は数多く出版されていますが、本書はそれらとは一線を画します。
というのも、通常、レシピ本では、料理の再現性の高さが求められますが、この本は、毎回同じ味のものを作ることを重視しません。発酵食品のできは、微生物の環境に左右されるので、レシピ通り作っても、毎回同じようにはできないからです。それよりも、発酵食品作りを通して自分だけの味を発見する楽しさを追求しています。
“発酵させる”とは、微生物のはたらきで食材を変化させることです。環境によって存在する微生物はさまざまですから、同じ場所で、同じように作っても、季節や作る人が違えば違う味の発酵食品ができますし、発酵期間によっても味は異なります。
ですから、この本にはこう書かれています。
■発酵は生きもの。愛情たっぷりかけて、見守って、あなただけの味に育ててください。
■同じように作っても毎回味が違う。それが発酵の面白いところ。失敗は次回の成功のもとです。
失敗を次に生かすため、本書は甘酒や味噌などのレシピが掲載されているだけではありません。「カビた!」「いやな臭いがする!」「酸っぱい!」「発酵がすすまない!」「甘くない!」「味がぼやけている!」など、発酵食品づくりにまつわる具体的な失敗の原因と解決法まで記されています。
著者である料理研究家の舘野真知子さんは、自宅に発酵食品の貯蔵庫があるくらい、自家製発酵食品が生活の一部でした。そのため、この本には、発酵食品を毎日の生活の中で上手に活用するヒントがちりばめられています。
たとえば、発酵食品を使ったアレンジレシピは、どこでも買える食材を使った手間いらずのものばかり。簡単なのに驚くほどおいしい料理の数々は、健康的で盛り付けもきれいです。
2022年5月に舘野さんが急逝したことから、この本は、期せずして生前最後に手掛けた著書になりました。「本棚に仕舞い込むのではなく、キッチンの棚にいつも置いてほしい」という舘野さんの想いから、開いておきやすく、料理をしながら見るのに最適なA5横判の判型になっています。舘野さんのレシピは、これからも生き続けます。
もう失敗なんて怖くない!がんばりすぎない発酵づくり
舘野真知子 著
1,650円 文化出版局
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