ノーマの発酵ガイド レネ・レゼピ 著, デイヴィッド・ジルバー 著, 水原 文 翻訳

「世界一予約が取れないレストラン」の斬新な発酵食

ノーマは、デンマーク・コペンハーゲンに2004年にオープンしたレストランで、2010年以降、4回も「世界ベストレストラン50」の第1位に輝き、ミシュランガイドでは2つ星を獲得。「世界一予約が取りにくいレストラン」としても知られています。その創業者で、食の世界に革命を起こしたといわれる天才シェフ、レネ・レゼピさんが一般の読者に向けて、発酵食品づくりや実用的なレシピをまとめたのがこの本です。

ページをめくってみると、「乳酸発酵ブルーベリー」「コーヒーしょうゆ」「塩麹バター」などなど……。びっくりするような発酵食品が紹介されています。500点以上もある写真はどれも美しくて、センスがよくて、どんな味わいなんだろう、どんな香りかな、とワクワクせずにはいられません。

共著者デイヴィッドさんの言葉が刺激に

ノーマには以前から興味を持っていました。ノーマでは、あらゆる料理に何らかの発酵食品が使われていると聞いていたからです。本書の冒頭でも、レネさんは「発酵がなければ、ノーマもないのだ」「世の人々は、ノーマといえばすぐに野生の動植物を連想するが、実はノーマを支える大黒柱は、発酵だ」と書いています。

私たち日本人の食卓には、しょうゆやみそ、みりん、酢などの調味料から、納豆や麹、ぬか漬けなど、多様な発酵食品があります。そういった日本独自の発酵食品をレネさんたちは独自の視点で深く研究し、固定観念にとらわれない自由な発想で使いこなしているのです。この本にはそんな研究のプロセスと成果が、100以上のレシピとなって惜しみなく公開されています。

2019年秋にアメリカのポートランドで開催された発酵フェスティバル(Fermentation Festival in Portland)で、この本の共著者で、ノーマの発酵ラボのリーダーを務めていらっしゃるデイヴィッド・ジルバーさんにお会いすることができました。フェスティバルにデイヴィッドさんが参加されると知った私は、4cm以上もある分厚い本書を日本から持参し、サインをいただきました。

デイヴィッドさんは、発酵や料理を哲学的にとらえていて、視野が広く、自由で柔軟な思考をもっている方。その一方で、「そこまでやるか!」と驚くほどのこだわりに感服もしました。発酵には10年以上携わっていますが、私なんてまだまだ。もっとがんばるぞ! と刺激を受けました。

おいしい料理をつくるためには、実験が必要です。どんな小さな思いつきでも、実験してみればかならず発見があるし、試してみなければわからないこともたくさんあります。そんな実験を楽しみ、積み重ねてゆく経験が、豊かでおいしい料理を生み出す力になるのだと私は信じています。

【書籍情報】
ノーマの発酵ガイド  レネ・レゼピ  (著), デイヴィッド・ジルバー (著), 水原 文 (翻訳)
KADOKAWA ¥8,580(税込)

目次

はじめに
この本について
発酵入門
果物と野菜の乳酸発酵
コンブチャ


みそ
しょうゆ
ガルム
黒フルーツと黒ベジタブル
器材
入手先
謝辞
索引

舘野真知子

料理研究家・管理栄養士。
栃木で8代続く農家に生まれる。管理栄養士として病院勤務後、アイルランドの料理学校に留学。ダリーナ・アレン校長に影響を受け、生産者や素材の尊重がモットー。帰国後はフードコーディネーターとして活動した後、レストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、発酵食品や発酵文化の奥深さを知る。現在は料理家として発酵などをキーワードに活動し、メディアを通じて 料理の楽しさや食べることの大切さを伝えている。『くり返し作りたい 糖尿病のおいしい献立』(西東社)他、著書多数。