タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ 小林宙(そら)著

タネの未来=食の未来であることに、改めて気付かされる1冊。

この本は、一人の高校生、小林宙(そら)くんによって書かれました。

自身が種に興味を持ち、世界で種が置かれている状況について調べ、考え、そして、種の販売会社を起業するに至るまでが語られています。

小林くんは、私が店長を務める『農業書センター』の長年のお客さんでもあります。小学生のころは店で何時間も農業や植物に関する本を読み漁っていました。お弁当を持参して、丸1日いる日もあったくらいです。こうしているうちに、当店をよく訪れる編集者に小林くんを紹介することになり、この本の出版が実現しました。

小林くんは、最初は種そのものにだけ興味を持っていましたが、深く知るにつれて食の問題まで考えるようになりました。なかでも固定種(何世代にもわたり選別されることにより、その野菜の特徴が固定したもの)の魅力を知ることにより、種を考えることが、私たちの未来の食を考えることにつながると気づいたのです。

やがて小林くんは、地方にある種の店を訪ねる一人旅をしたり、群馬県に畑を借りて野菜を栽培したりと、精力的に活動するようになります。そして家族の協力も得て各地の珍しい種を仕入れて販売する会社、鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーションを中学3年生の時に起業します。小林くんの家族の温かさが描かれている点もこの本の魅力です。

以下の会社のホームページで、小林くんが集めた種を購入できます(2022年2月現在、小林くんが入試のためお休みしています)。

【関連リンク】
鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション

種についてのさまざまな話題(F1種とは何か?タネの会社はどのように儲かるのか?種子法・種苗法とは?など)のアウトラインを知りたい方は、まずこの本を読んでみてください。小林くんが自分の言葉でわかりやすく説明しているので、種に関する入門書として、お勧めです。

(小林くんが会社で取り扱っている種の一部は、農業書センターでも販売しています。)

【書籍情報】
「タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ」小林宙 著
 家の光協会  ¥1,760(税込)

目次

第1章 タネについて考えてみる
もしもこの世界からタネがなくなったら
食べもののタネは、ふつうのタネとは全然違う ほか

第2章 伝統野菜を守るために
多様性を守ることは僕たちの生存戦略だ
タネがなくなれば、食文化もなくなる

第3章 事業を立ち上げる
屋号「鶴頸種苗流通プロモーション」に込めた思い
タネは、あえて置いてなさそうな店で売る

第4章 僕とタネとの出会い
2年目のアサガオがうまく育たなかった
昔の農業書は学びと笑いで満ちている

また、小林宙くんが参加したイベント「藤原辰史先生と語る『食べること』『生きること』」での講演(農文協とパルシステムの共同企画)を収録した以下の本もおすすめです。

今年度の大学入学共通テスト「国語」で、この本を題材にした問題が出題され、「豚肉目線で現代文解いたのは初めて!」などとSNS上で話題になりました。

『かんがえるタネ 食べるとはどういうことか 世界の見方が変わる三つの質問』藤原辰史 著
農文協  ¥1,650(税込)

 

 

 

農業書センター/店長

日本で唯一の農業と食の専門書店。書店のない地域にも本を届けることを使命として、1994年にオープン。地方の農家からの信頼は厚く、様々な相談・注文が寄せられます。店長の荒井操(みさお)さんは、農家のための本のコンシェルジュ。何でも相談に乗ってくれます。ここでしか手に入らない本も多数あり、実際の書店に足を運ぶ喜びを味わえます。